大仏のおでこには大きなイボのようなものがあります。
実は、長くて白い1本の毛が、右巻きに巻いて固まったものです。
常に光を放ち、世界を明るく照しています。
しかも伸ばした時の長さは、一丈五尺(約4.5メートル)です。
この記事では、存在感がありすぎる大仏のおでこの毛、「白毫」の秘密に迫ります。
また白毫でわかる仏像社会の仕組みや、意外すぎる意味や由来も紹介しています。
最後までお楽しみください。
大仏のおでこにあるのはイボではなく毛
大仏のおでこの真ん中にある、大きなイボのようなもの。
その正体は白毫と呼ばれる、1本の長くて白い毛です。
普段は右巻きに渦を巻いて、おでこの真ん中に収まっています。
その大きさは、直径1寸(約3センチ)、長さ3寸(約9センチ)。
仏像によっては、白毫びゃくごうが光を放つということから水晶で作られているものもあります。
また以下の2つの状況になると、白毫は光を放ちながら真っ直ぐに伸びます。
1:人々に教えを説き、導くとき
2:慈悲を発揮して人々を救うとき
普通の人なら考えられない毛の長さですが、どういうことなのでしょうか?
【釈迦はまさかの巨人?4メートル越えの高身長!】
直径が3センチ、高さが9センチもの出っ張りが、おでこに存在していたら邪魔なはずです。
しかし驚くことなかれ!
経典によると釈迦の身長は1丈6尺。
古代中国の周尺で約3.7m、日本では約4.8m。
2階建ての家より少し低いくらいの身長です。
そう思えば、この大きな出っ張りも邪魔にならなかったかもしれませんね。
しかしなぜ白毫は右巻きなのでしょうか?
白毫が右巻きなのは清らかだから
大仏のおでこに渦巻く毛「白毫」は、なぜに右に巻いているのでしょうか?
実はインドには左右の手にそれぞれ意味があり、日常生活でも使い分けています。
左手 | 右手 | |
状態 | 汚ない | キレイ |
使い方 | トイレでお尻を拭く | 食事をする |
心の状態 | 欲にまみれた心 | 清らかな仏の心 |
仏教の考えでは、右がキレイ(清浄)で左がキタナイ(不浄)とされています。
だから、インド人はでは右手を使って食事をし、左手でトイレの後にお尻を洗うのです。
悟りを開いた釈迦の眉間から生えている、光り輝く1本の毛は清らかに違いない。
だから右巻きなんです。
白毫は釈迦のリアルな体の特徴
大仏とは、釈迦の姿を像にしたものです。
釈迦の体には32個の優れた特徴と、さらに細かい80個の特徴があったそうです。
これは三十二相八十種好と呼ばれ、その1つに「白毫相」という特徴があります。
白毫相:眉間に右巻きの白毛があり、明光を放つ。
見た人の目を釘づけにする、大仏のおでこにあるイボのような毛「白毫」。
これは実際に見られた釈迦の体の特徴だったのです!
この白毫は本来、悟った後の釈迦を表す如来像にしかないものです。
しかし、悟りを求めて修行中の釈迦である菩薩像にもついています。
でも、なんでそんなことになったのでしょうか?
仏像は階級社会!白毫でランクがわかる
仏像には階級があり、大きく分けて5つあります。
実は、5つの仏像の中で悟っているのは最上位の「如来」だけ!
あとの4つは悟りを求めて修行中の身だったのです。
さらには如来と菩薩だけが釈迦の姿を表しています。
その他の仏は化身だったり、ヒンドュー教の神様や普通の人間です。
高僧
ランク | 仏の種類 | どんな仏? |
1位 | 如来 | 悟りを開いた釈迦を表す。 |
2位 | 菩薩 | 悟りを求める人を表す。 出家前の釈迦がモデルになっている。 |
3位 | 明王 | 大日如来の化身。 煩悩まみれの人間を怒って諭すのが仕事。 |
4位 | 天部 | もとはヒンドュー教の神様。 仏教用に名前と姿を変えたもの。 |
5位 | 羅漢 高僧 | 羅漢は釈迦の弟子。 高僧は修行中の人間。 |
・如来:悟りを開いた人→悟った後の釈迦がモデル
・菩薩:悟りを求めて修行中→出家する前の釈迦がモデル
すなわち白毫がついている仏像なら、それは釈迦の姿を表しているのです。
釈迦は仏教の始祖です。
だから悟っていようがいまいが、絶対的に上の存在。
そんな思いが白毫には込められています。
白毫の有無 | |
如来 | |
菩薩 | |
明王 | ❌ |
天部 | ❌ |
羅漢・高僧 | ❌ |
【大仏の髪型はパンチパーマではなく天然パーマ】
大仏を一目見た瞬間、次の疑問が頭をよぎります。
「もしかしてパンチパーマ???」
大仏のパンチパーマのような髪型は、1本の毛が右巻きに巻いて固まったものです。
この個性あふれる髪型の名前は「螺髪」と言います。
この髪型は悟りを得た釈迦である如来にしか見られない特徴です。
大仏のユニークすぎる髪型「螺髪」については、以下の記事で詳しく解説しています。
大仏のパンチパーマな髪型の名前は(らほつ)!如来限定の悟りの証
白毫の意味はうぶ毛!由来はまさかの〇〇
白毫とは、もともと中国の厦門の方言で、「うぶ毛・白い毛」を意味します。
厦門はかつて紅茶を積み出す港でした。
うぶ毛のある若い茶葉を取り扱ったことに由来して、白毫は「うぶ毛」の意味を持つようになりました。
そのことから白毫は「茶葉の細かさの等級を表す言葉」としても使われています。
オレンジ・ペコという名前の紅茶は、実は紅茶の種類ではなく等級を表しています。
オレンジ・ペコ:
枝の尖端部から2番目に若い葉だけを摘み取ったもの。
若い葉なのでが茶葉が柔らかいという特徴があります。
決してオレンジ風味ではありません。
白毫が凡人にも生えることがある?
全ての人にではありませんが、体に1本の長くて白い毛が生えることがあります。
宝毛とは、体の一部分に1本だけ長く生えてくる透明あるいは白い毛の通称です。
福毛とも呼ばれ、関東の一部地では「命の毛」とも呼ばれます。
宝毛はとても縁起が良いと信じられ、抜いたり切ることはタブー。
生える場所によって、それぞれ意味があります。
その一部を紹介しましょう。
宝毛の生えた場所 | 意味 |
おでこ | 数多くの幸運が舞い込む。 悟りの境地に達することができる。 |
眉毛 | 財運に恵まれる。 |
目尻 | 恋愛運に恵まれる。 |
耳 | 物質的な豊かさに恵まれる。 |
頬 | 健康運に恵まれる |
この宝毛が縁起が良いとされる理由は、仏像のおでこにある白毫を連想させるからです。
釈迦に見られた特徴が、一般人にも見られたらそれはラッキーそのもの。
「もしかして悟りかかっているのかも」と思いたくなるのも仕方がありませんね。
【インド人のおでこの印は白毫と無関係】
仏教の始祖である釈迦はインド人。
インド人といえば、おでこに印がついています。
原則としてヒンドゥー教徒の既婚の女性(夫が存命中)がつけるものです。
別名ティクラとも呼ばれ、この印をつけるのは幸せを祈るための習慣のようなもの。
白毫とは場所が同じですが、無関係です。
誰もが大仏を見た瞬間、「おでこに大きなイボがある」と思いがち。
しかし実際は、私たちのはるかに想像を超えた「長くて白い一本の毛」でした。
右巻きに渦巻いて、おでこの中心で固まっています。
しかも悟った釈迦と、悟りを求めて修行中の釈迦にしか見られない特徴。
仏像のお顔を見た瞬間、「大きなイボ」なんて思うのは今日限りでおしまいにしましょう。