友人と中華を食べに行き、真っ赤な麻婆豆腐を頼みました。
「昔から辛党なんだ。」と言ったら、友人は私を鼻で笑いながら言いました。
「その使い方は間違っているよ。」
どうやら私は、辛党という言葉を間違って使っていた様です。
では一体どの様な使い方が正しいのでしょうか?
この記事では、「甘党」「辛党」の、本当の意味と正しい使い方をお伝えします。
甘党と辛党の本当の意味
甘党と辛党の本当の意味は以下の通りです。
「辛党」の意味は、甘い物よりお酒が好きな人のことです。辛い物好きな人のことではありません。
同じく「甘党」とは、お酒よりも甘い物が好きな人のことです。甘い物好きな人のことではありません。
お酒と甘い物を比べて、どちらが好きかを表している言葉です。
甘党 | 辛党 | |
広辞苑 | 酒類よりは甘いものの方を好む人。 | 酒好きの人。左党。 |
大辞林 | 酒よりも,甘いものを好む人。 | 菓子などの甘い物よりも酒類の好きな人。左党。 |
大辞泉 | 酒よりも、甘い菓子類を好む人。 | 菓子などの甘いものよりも酒のほうを好む人。左党。 |
辛党と同じ意味の言葉に、左党(さとう)や左利き(ひだりきき)があります。江戸時代、大工・鉱夫は右手に槌(つち)を、左手にノミを持つことから、右手を槌手、左手をノミ手といいました。このノミ手と飲み手をかけて、お酒飲みの人を左利きや左党と言う様になりました。
甘党と辛党のよくある間違いと正しい使い方
よくある間違い①
× 「僕は辛党。カレーはいつも激辛だよ。」
正しい使い方は次の通りです。
○「僕は辛い物好き。カレーはいつも激辛だよ。」
よくある間違い②
×「私は甘党だけど辛党でもあるの!」
甘党は「お酒よりも甘い物の方が好きな人」、辛党は「(甘い物よりも)お酒が好きな人」。それぞれお酒と甘い物を比べた上での好みを表す言葉なので、甘党で辛党なのは意味が通じません。甘い物好きやお酒好きと言い換えたり、甘い物とお酒の両方好きなことを表す「両刀遣い」を使いましょう。
正しい使い方は次の通りです。
○「私は甘い物好きだけどお酒も好きなの!」
○「私は両刀遣い(りょうとうづかい)なの!」
正しい使い方①
「山田さんへのお土産、何にしようか?ケーキとか和菓子がいいかな?」」
「あの人は辛党だから、焼酎とか日本酒がいいと思うよ。」
「そう言われてみると、甘い物を食べる姿を見たことがないかも。」
正しい使い方②
「あれ、お酒を飲まなくなったの?」
「うん。しばらく飲んでいなかったら、味覚が変わっちゃったみたい。今はお酒よりも甘い物の方が好きかな。」
「すっかり甘党になっちゃったね!」
だから間違えやすい甘党と辛党
もともと辛党の意味は辛いもの好き
もともと辛党の意味は辛い物好き。そこから酒好きという意味も持つようになりました。
辛党に酒好きという意味が加わったのには、酒を飲む時のつまみに塩辛い物が多いからという説や、お酒自体の味が辛いからだという説があります。
そもそも辛党・甘党という言葉が使われるようになったのは大正・昭和頃から。
この頃の文献では「酒好き」の意味だけでなく「辛い物好き」という意味でも辛党が使われていました。
「辛党=辛い物好き」で使われている例 | ||
大正の例 | 大正15年(1926年) | 「趣味の旅 名物をたづねて」松川二郎著 |
昭和の例 | 昭和35年(1960年) | 「私は赤ちゃん」松田道雄著 |
松川二郎さんは読売新聞の記者。松田道雄さんは京都大学医学部を出て医者となり、後に数多くの育児書を書いた方。どちらも普通の人に比べて、言葉の使い方には敏感だと考えられます。そうなると、この「辛党=辛い物好き」という意味は、この頃の一般的な認識だった様に思えます。
年代によって大きく違う辛党の認識
(「NHK放送文化研究所ウェブアンケート2014年3月〜4月実施」をもとに編集)
「甘党」と「辛党」の意味をひとまとめ
「甘党」と「辛党」は対義語で、どちらも「お酒」を基準として意味が成り立っている言葉です。
甘党 | 酒より甘いものを好む人。 |
辛党 | (甘いものよりも)酒好きな人。左党や左利きとも言う。 |
特に若い世代は「甘党=甘い物好き」「辛党=辛い物好き」として使いがちですが、辞書の意味に基づくと間違いなので要注意です。