日本人なら誰しも耳にしたことがある「月にうさぎがいる」説。
こう言われる理由は、実はインドの仏教説話が由来です。
紀元前1世紀ごろに書かれたジャータカ神話が、仏教伝来とともに日本にも伝えられました。
それが平安末期に書かれた今昔物語によって、日本中に広まったのです。
この記事では、当たり前のように語られる「月にうさぎがいる」理由に迫ります。
うさぎの驚きの正体や、月にうさぎがいるように見えるカラクリも紹介します。
最後までお楽しみください。
月にウサギがいる理由はインドの仏教説話
日本人ならお馴染みの「月にうさぎがいる」説は、インドの仏教説話が由来です。
インドのジャータカ神話(本生譚)という、紀元前1世紀ごろに書かれた釈迦の前世の物語がネタ元。
このお話は仏教伝来とともに日本にも広まり、平安時代末期に書かれた「今昔物語」に紹介されました。
月にウサギがいる理由|始まりはインドの森の中
昔、インドのとある森に、キツネとサルとうさぎが仲良く暮らしていました。
そんなある日、3匹はお腹をすかせた老人に出会いました。
「とてもお腹が減っています。何か食べ物をください。」と老人は言います。
すると3匹は老人を助けようと、
「ちょっとお待ちください!今すぐ食べ物を探してきます。」
そう言って、それぞれ食べ物を探しに行きました。
サルは得意の木登りで果物を、キツネは素早さを生かして川から魚をとり、老人のもとへ帰りました。
ところが、うさぎだけは何もとってくることができませんでした。
献身的すぎる!うさぎの取った捨て身の行動
うさぎは老人を助けたいとそれでも考えます。
そこで、サルとキツネに薪を集めてもらい、火をたいてもらいました。
「私は何も食べ物を持ってくることができません。どうか、この私の肉を召し上がってください。」
そう言うと、火の中に飛び込み、そのまま焼け死にました。
実は、その老人の正体は帝釈天だったのです。
うさぎの捨て身の行動に感動した帝釈天は、うさぎの真心を永遠に残そうと月にうさぎをとどめさせました。
月のうさぎの正体はまさかの〇〇!!
お腹を空かせた老人を救うため、自ら命を絶ったうさぎ。
この献身的なうさぎは、ただの「うさぎ」ではありません。
なんと!!お釈迦様が人間としてこの世に出る前に修行しているお姿だったのでした。
うさぎの正体が、釈迦の前世とは想像を超える結末です。
釈迦
仏教の開祖。インドはシャカ族の王子として生まれる。
29歳で悟りを求めて出家し、6年間の難行苦行の末に悟りを得る。
その後80歳まで仏教の教えを広めた。
生没年不詳。紀元前463―前383年説と、前565―前485年説あり。
帝釈天
古代インドの神様・インドラがモデル。
釈迦の守るガードマンであり、生涯を見守った目撃者でもある。
うさぎが月にいる理由はこれでわかりました。
月でウサギが餅つきする理由
月にうさががいる理由は、帝釈天が献身的なうさぎの姿を月に残したからでした。
しかし、どうして餅をついていると言われるのでしょうか?
・老人がお腹をすかせないように
・うさぎが食べ物に困らないように
と考えられていますが、他にも3つほど説があります。
1:望月と餅つきをかけた説
2:豊穣の感謝を表した説
3:中国の神話に由来した説
1つずつ解説します。
1:望月と餅つきをかけた説
満月を意味する言葉「望月」が「餅つき」を連想させたからという説があります。
要はゴロ合わせですね。
2:豊穣の感謝を表した説
中秋の名月は豊穣祝いです。
たくさんのお米が取れたことへの感謝を表して、うさぎが餅つきをしているとした説があります。
3:中国の神話に由来した説
中国の神話に次のようなお話があります。
弓矢の名人にゲイという人物がおりました。
彼は古くからの中国の女神である西王母から、不老不死の仙薬をもらいました。
ところが、彼の妻であるジョウガイがひそかに盗んで飲んでしまいました。
身についた霊力で月に逃げ込んだところ、罰としてヒキガエルにされてしまいます。
その結果、月の中に住み続けることになりました。
一説にうさぎは西王母のお伴で、仙薬をついていると言われています。
この中国の「月の中で仙薬をついているうさぎ」が、日本では「餅をついている」に変わったという説です。
【十五夜のお月見でお団子を食べるのはなぜ?】
十五夜とは、旧暦の8月15日。
十五夜にお団子をお供えする風習が始まったのは江戸時代のこと。
お米が無事に収穫できたことを感謝して、お米の粉で作ったお団子を月に見立ててお供えしたのが始まり。
日本では古くから月を信仰の対象としてきました。
また月神である月読命は農耕の神様でもあります。
ピラミッドのようにお団子を積み上げて、感謝と祈願を月まで届かせようとしたのです。
月読命
天照大神、素戔嗚とともにイザナギから生まれた三貴神のひとつ。
夜の国を治める神として崇めらる。
月でうさぎが餅つきして見えるカラクリ
月のうさぎは、「海」と呼ばれる黒い部分からできています。
「海」とは、玄武岩質の溶岩が地下から流れ出た部分で平原になっています。
高地の地質に比べて黒っぽく、太陽からの光の反射が少ないために影のように見えるのです。
ウサギの耳の部分は、「豊かな海」と「お神酒の海」からできています。
お顔は「静かな海」です。
海外では月に何がいる?
日本のように「月にうさぎがいる」と考える国は、中国、インドなどアジア全体にわたる習慣です。
月の模様をうさぎ以外の動物や人に見立てる例を紹介しましょう。
国 | 月の模様 |
アラビア | ライオン |
カナダ | 水を運ぶ女性 |
北アメリカ | 本を読む女性 |
南ヨーロッパ | カニ |
東ヨーロッパ | 髪の長い女性 |
月に見える影のような模様は、世界のどの国で見ても同じです。
日本人なら誰でも耳にしたことがある、「月にうさぎがいる」と言うお話。
しかし、このネタ元がまさかのインドの仏教説話だったとは驚きです。
さらには、うさぎが釈迦の前世の姿だとは、想像をはるかに超えています。
満月を見るときは、うさぎの真心に思いを馳せながらお団子を頬ばりましょう。
きっと格別に美味しく感じるはずです。