「ゆずこしょう」に「こしょう」は入っていません。
実は、「ゆずこしょう」の「こしょう」とは「唐辛子」のことです。
ゆず+こしょう | ゆず+唐辛子 | |
ゆずこしょう | 誤解 | 正解 |
ゆずこしょうは大分県が発祥です。
九州の一部では「唐辛子」のことを「こしょう」と読んでいたため、このような名称になったということ。
しかし、その原因を突き詰めると・・・コロンブスの勘違いがはじまりでした。
この記事では、こしょうが入っていないのに「ゆずこしょう」という名称になった秘密にとことん迫ります。
勘違いが生み出した歴史に「ヘェ〜」と感心すること間違いなしです。
ゆずこしょうにこしょうは入っていない
今や全国的に市民権を得た薬味調味料「ゆずこしょう」。
しかし、意外にも知られていないその原材料。
驚くことに、「ゆずこしょう」には「こしょう」が入っていません。
ゆずこしょうの材料は次の3つだけ。
・ゆず表皮
・唐辛子
・塩
入っているのは「こしょう」ではなく「唐辛子」です。
ゆずこしょうの発祥は大分県。
九州の一部では、唐辛子のことを「こしょう」と呼んでいました。
そのため「ゆず」と「唐辛子」で作らる風味豊かな香辛料を「ゆずこしょう」と名付けたのです。
しかしなぜ、九州の一部では「唐辛子」のことを「こしょう」と読んだのでしょうか?
実は、それはコロンブスの勘違いが原因だったのです。
コロンブスは唐辛子をこしょうと勘違い
唐辛子はもともとは日本の香辛料ではありません。
原産地は中南米で、その歴史は想像以上に古いものです。
メキシコ中部にあるラワカン渓谷では、紀元前6500~5000年代の遺跡から唐辛子が出土しています。
そんな古くから存在していたにもかかわらず、唐辛子が世界に広まったのはわずか500年前のこと。
これはコロンブスがアメリカ大陸を発見したことで広まったのです。
イタリア人じゃ!
男のロマンを感じます。
アメリカ大陸でコロンブスは「唐辛子」を発見しますが、これを「こしょう」と勘違い。
この勘違いが「こしょう」が入っていないのに「ゆずこしょう」になった始まりだったのです。
コロンブスは黒こしょうを求めて大航海
その昔、「黒こしょう」は肉を保存する貴重な香辛料でした。
当時、「黒こしょう」は金と同じぐらいの価値を持っており、高値で取引されていたのです。
「黒こしょう」はアジアの各地で栽培され、インドに集められていました。
それをアラビア商人は独占し、ヨーロッパに運んで儲けていたわけです。
そんな貴重な「黒こしょう」を求め、インドを目指して航海に乗り出したのがコロンブス。
しかし、ここで運命のいたずらが!!
1492年にコロンブスが発見したのは、インドではなくアメリカ大陸だったのです。
アメリカ大陸をインドだと勘違い
アメリカ大陸に到着したコロンブスですが、そこをインドだと勘違いします。
そのためアメリカ原住民を「インディアン」と呼んだり、カリブ海の島々を西インド諸島と名付けたのです。
勘違いはまだまだ続きます。
アメリカ大陸で発見した唐辛子を、「こしょう」を意味する「ペッパー」と呼びました。
しかしながら、こしょうはコショウ科コショウ属の植物で、唐辛子はナス科トウガラシ属。
全く別物にもかかわらず、「唐辛子」を「こしょう」だと言い張ったのです
世界に羽ばたいた唐辛子
コロンブスがアメリカ大陸からヨーロッパに持ち帰った「こしょうと」名付けられた「唐辛子」。
それはあまりに辛く、本物のこしょうと風味が違いました。
こしょうの代わりとしては、ヨーロッパでは認められませんでした。
時は大航海時代。
ポルトガルの船乗りたちが、長い航海で悩まされたのが壊血病でした。
壊血病の原因はビタミンC不足。
船乗りたちは病気を防ぐため、ビタミンCを多く含む唐辛子を船に大量に積むようになったのです
ポルトガルの交易ルートによって、唐辛子はアフリカからアジアへと広がります。
ヨーロッパでは受けいれられなかった唐辛子ですが、アフリカやアジアでは好んで食べられるようになったのです。
そしていよいよ、日本にも唐辛子はやってきました。
いよいよ唐辛子が日本にやってきた!
コロンブスの勘違いから世界中に広まった「こしょう」という名の「唐辛子」。
そんな唐辛子が日本にやってくるのは、アメリカ大陸発見からわずか50年ぐらいのこと。
最初は辛すぎで食べられなかったんじゃ。
今でこそ香辛料として日本人にも愛される唐辛子。
しかし日本に入ってきた当初は好まれず、足袋に入れてしもやけ防止や毒として用いられました。
唐辛子が日本に伝わったのは、16世紀のこと。
ポルトガル人の宣教師バイタザール・ガコが、1542年に豊後の国守だった大友義鎮に唐辛子の種を献上した記録があります。
豊後とは現在の大分県です。
【ちなみに唐辛子の語源は外国の辛子】
唐辛子とは、唐からきた辛子という意味。
ここでいう唐とは中国のことではなく、外国という意味。
辛子とは和がらしと洋がらし(マスタード)の2種類があり、どちらもアブラナ科からし菜が原料。
このタネを粉にして、水で練ってできた香辛料が辛子なのです。
実は、こしょうも唐辛子も辛子も全部違う種類の植物でした。
こしょう | 唐辛子 | 辛子 | |
分類 | コショウ科 | ナス科 | アブラナ科 |
とても同じものとは思えないんですけど。
ゆずこしょうは赤・青・黄の3種類!
ゆずこしょうには3種類あります。
赤ゆずこしょう=赤唐辛子+黄色いゆずの皮
青ゆずこしょう=青唐辛子+青いゆずの皮
黄ゆずこしょう=黄唐辛子+黄色いゆずの皮
見た目の色がそのまま名前になっています。
この色の違いは材料の色の違いが原因です。
赤ゆずこしょう | 青ゆずこしょう | 黄ゆずこしょう | |
材料 | 赤唐辛子 黄色いゆずの皮 | 青唐辛子 青いゆずの皮 | 黄唐辛子 黄色いゆずの皮 |
辛さ | マイルドな辛さ | ピリッと辛い | かなり辛い |
青ゆずこしょうが最もメジャーで、ピリッとした辛さが魅力。
黄ゆずこしょうはかなり辛いので、辛いものが大好きな人におすすめです。
お好みでお楽しみください。
「こしょう」が入っていないのに「ゆずこしょう」。
それはコロンブスの勘違いが、はるか彼方の日本の薬味調味料の名前にまで影響した結果でした。
「ゆずこしょう」は鍋や汁物をより風味豊かに変える魔法の香味調味料。
その爽やかな辛味と風味を堪能しながら、唐辛子を世界に広めてくれたコロンブスに感謝しましょう。
参考論文:高橋保 1994 アジアを中心とした唐辛子の生産と伝搬の史的考察