カマキリは飛ぶことができます。
飛べるといっても、下手くそなのです。
トンボや蝶のように自由自在に飛ぶことができず、ピョーンと一直線に飛びます。
だから普段の移動は、飛ばずに歩くのです。
この記事では、カマキリが実は飛べるという事実と、飛ぶのが下手なまさかの理由を紹介しています。
今日からあなたがカマキリを見る目が変わってしまうかもしれません。
ぜひ最後までご覧ください。
カマキリはまるでジャンプするように飛ぶ
カマキリは飛べます。
しかし、トンボや蝶のような飛び方ではなく、まるで大きくジャンプするように飛ぶのです。。
カマキリの飛ぶ距離は数十メートル、高さは5m程度。
そう高くは飛べませんが、ダイナミックに茂みの間を直線的にピョーンと飛びます。
カマキリには前羽2枚と後羽2枚の合計4枚の羽があります。
飛ぶときは前羽は広げてもほとんど動かしません。
後羽を羽ばたかせ、足を広げて自慢のカマを前に伸ばして飛びます。
この飛び方って、何かに似ていると思いませんか?
【羽と翅の違いを説明】
この記事ではわかりやすいように、前羽・後羽と表現しましたが正確には「前翅・後翅」です。
羽も翅も飛ぶための翼や空を飛ぶための体表器官をさします。
この2つの違いは以下の通りです。
羽は鳥でも昆虫のどちらでも使われます。
翅は昆虫や昆虫に近い節足動物に使われます。
飛ぶのが下手なのは〇〇の親戚だから
一直線にしか飛べないカマキリは、普段はもっぱら歩いて移動します。
そしてここぞという時に、大ジャンプ!
あれ??何かに似てるような・・・。
実は、カマキリにもっとも近い仲間はゴキブリです。
カマキリにとってかなりのイメージダウンですが、本当の話。
カマキリもゴキブリも網翅目(もうしもく)という昆虫の種類です。
この網翅目には、ゴキブリ目、カマキリ目の2つがあります。
カマキリとゴキブリは2.6億年前に同じ祖先から分かれました。
似ても似つかない!そんなはずはないと思われるでしょうが、事実です。
ちなみにゴキブリが地面から飛べる距離は5mほどで、直線的にしか飛べません。
残念ながら、血は争えません。だって先祖が一緒なんだから。
参考記事:筑波大学(2019/2/1)プレスリリース ゴキブリの起源は意外に新しかった
【ゴキブリはカマキリよりもっと飛ぶのが下手】
ゴキブリは体に対して羽が小さいため、カマキリ以上に飛ぶのが下手くそです。
また全てのゴキブリが飛べるわけでなく、飛べないゴキブリもいます。
飛ぶゴキブリ | クロゴキブリ、ワモンゴキブリ、ヤマトゴキブリ |
飛ばないゴキブリ | チャバネゴキブリ |
一般家庭で見かけるのは、クロゴキブリとチャバネゴキブリです。
ゴキブリは重力に逆らって飛べないので、高いところから低いところにジャンプします。
もし天井にゴキブリがいたら、刺激しないようにしましょう。
追い詰められると飛ぶ習性があるので、あなたの頭の上に着地してしまうかもしれません。
低いところに逃げるのを待って、駆除するのが大事なポイントです。
なぜ?カマキリはオスの成虫だけが飛ぶ
全てのカマキリが実は飛べるわけではありません。
実は、飛ぶことができるのは成虫のオスのみ。
カマキリのオスの成虫だけが飛ぶ秘密をご紹介します。
意外!カマキリの幼虫には羽がない
カマキリの幼虫には羽がありません。
カマキリは生まれてから5~10回ほど脱皮を繰り返して成虫になります。
脱皮ごとに体が成虫に近づき、羽の元になる「翅芽(しが)」が出てきて最後には羽になるのです。
そうやって飛べない幼虫から、晴れて飛べる成虫になるのです。
要は羽があるものが成虫、ないものは幼虫。
ですが、なぜにオスだけに飛ぶことが許されたのでしょうか?
オスだけが飛べるのは身軽だから
カマキリの成虫は羽があっても、オスしか飛べません。
その理由は、オスはスマートだから。
体が大きくお腹が重たいメスは、飛ぶことができません。
日本最大のオオカマキリのオスとメスの大きさを比べると、かなり違うのがわかります。
オス | メス | |
オオカマキリの体長 | 68~92mm | 77~105mm |
オスはスマートなのに、メスはぽっちゃり体型。
メスはせいぜい飛んでも1mぐらいで、もっぱら歩いて移動するのです。
カマキリのオスが飛ぶのは愛のため
カマキリのオスが飛ぶ目的は1つ。
しかし広い草原で、メスとオスが出会うのはかなり難しい。
そこで飛べないメスは、オスに見つけてもらうために特別な匂いを放ちます。
それをを嗅ぎ取ったオスは、メスめがけてまっしぐらに飛ぶのです。
奇跡のように出会ったオスとメスは、自分たちの子孫を残すという目的を果たします。
カマキリは春から秋までのわずか半年の命。
この短い期間で、確実に自分たちの命を次に繋ぐことが最大の使命なのです。
カマキリのオスの成虫がだけが飛べるのは、愛するメスを見つけることと、命を繋ぐという使命から。
カマキリの美しく健気な命のリレーについては、別記事で詳しく解説しています。
合わせてご覧ください。
恋愛経験の少ないカマキリのオスだけがメスに食べられる衝撃の事実
【カマキリは餌を取るためには飛ばない】
カマキリは餌を取るときは、全く飛びません。
昆虫が来そうな花の中に潜んで、獲物が来るのを待ち伏せするのです。
しかも、獲物が取れた場所は長くとどまる傾向さえあります。
たとえ狩のために移動するとしても、飛びません。
歩くのです。
飛んだ方がよっぽど積極的に狩ができそうですが、カマキリにおいては違います。
草原の王者は意外と堅実なんです。
※あまりに空腹の場合、獲物を追いかけることもあります。
【飛ぶ以外に羽を広げる時は威嚇】
カマキリは愛するメスを探すときにしか飛びません。
そんなカマキリが、飛ぶ以外に羽を広げることがあります。
カマキリは生まれた瞬間から、食うか食われるかの弱肉強食の世界。
敵に出会ったらカマを振り上げ、羽を広げて自分を大きく見せます。
自分より強いトカゲや鳥にもこのように立ち向かい、食べられてしまうこともしばしば。
この身の程知らずのカマキリの行動は、ことわざにもなっています。
「蟷螂(とうろう)の斧」=自分をかえりみずに強いものに立ち向かうという意味
カマキリを漢字で書くと「蟷螂(とうろう)」です。威勢がいいですね。
カマキリは一直線にしか飛ばない。
その理由が、まさかのゴキブリの親戚だからとは信じがたい事実です。
しかしそう言われてみると、カマキリとゴキブリの飛び方はそっくり。
こちらに向かって特攻隊のごとく突っ込んでくる様に、人間の私たちは腰を抜かして驚きます。
この私たちの反応こそが、カマキリとゴキブリが近い親戚だという証拠でしょう。
今日からカマキリを見る目がちょっと変わってしまいそうです。