鬼滅の刃に登場する我妻善逸は「雷の呼吸」の使い手です。
そんな善逸の回想や夢の場面には、不思議なくらいに「桃」が登場します。
実は、これは単なる偶然ではありません。
善逸と桃には、切ってもきれない縁があります。
その秘密は、日本の神々が大活躍する魅惑の物語「古事記」に隠されていました。
この記事では、善逸の回想や夢の場面にやたらと桃が登場する理由を解説しています。
古事記を読んだことがない人も、思わず「ヘェ〜」と言いたくなること間違いなしです。
善逸の回想や夢には何かと桃が登場
鬼滅の刃全23巻の中で、桃が出てくるシーンは3つあります。
そのどれもが不思議と善逸の回想もしくは夢の中です。
1:兄弟子に桃の実をぶつけられる
2:夢で襧豆子と桃林でデートする
3:爺ちゃんと桃の木がある川で話す
そのどれもが不思議と善逸の回想もしくは夢の中です。
1:兄弟子に桃の実をぶつけられる
鬼滅の刃4巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
修行時代の善逸は、育手の爺ちゃんのしごきに耐えられません。
実力のある元柱の指導は厳しいですが、剣士として実にありがたいこと。
しかし善逸はすぐに泣き、わめき、逃げ出す、ものすごいヘタレです。
そんな善逸を邪魔に思うのは、師を同じくする兄弟子の獪岳。
「お前みたいな奴に割く時間がもったいない」
そう言うと、怒りに任せて善逸の頭に桃の実を投げつけます。
※桃を善逸に投げつけたことから、獪岳は「桃先輩」とネット上では呼ばれていました。
2:夢で襧豆子と桃林でデートする
鬼滅の刃7巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
善逸が炭治郎達と乗り込んだ無限列車には、恐ろしい血鬼術が仕掛けられていました。
それは車掌が切符を切ると眠りに落ち、幸せな夢を見ている間に精神の核を壊されるという巧妙な罠。
罠とも知らず善逸が見た幸せな夢は、大好きな襧豆子と桃林でデートするというもの。
「こっちこっち!こっちの桃が美味しいよ」
何も知らずに鼻の下を伸ばしてニヤニヤ眠る善逸は幸せそのものです。
3:爺ちゃんと桃の木がある川で話す
鬼滅の刃17巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
兄弟子だった獪岳が鬼になり代わり、上弦の陸となって再会します。
まさかの雷一門の兄弟対決。
その死闘で善逸は自らが編み出した雷の呼吸漆ノ型「火雷神」で獪岳を打ち破ります。
意識を失った中、善逸は育手である爺ちゃんに会います。
自分の弟子から鬼を出した責任を取るため、切腹して他界した爺ちゃん。
そんな爺ちゃんと善逸が会うのは、桃の木が生えた川辺です。
このように、なぜか善逸の回想や夢の中でだけに桃が出てきます。
実はこの理由が日本最古の書物である古事記に由来しているのです。
古事記における雷神と桃の深い関係
古事記とは712年に完成した、日本最古の歴史書です。
その内容は日本の神々がおりなすワクワクドキドキの壮大な物語。
そんな古事記に、鬼滅ファンなら見逃せない雷神と桃のエピソードがあります。
日本は神様によって生まれた国
昔々、イザナギとイザナミという夫婦の神様がいました。
夫:イザナギ=伊邪那岐
妻:イザナミ=伊邪那美
二人は力を合わせて日本を生み出し、また多くの神々も誕生させました。
しかし火の神である火之迦具土神を生んだ時、イザナミは大火傷をして死んでしまいます。
愛する妻を亡くしたイザナギは怒り狂って、生まれたばかりの火之迦具土神の首を切り落としてしまいました。
【火之迦具土神はタイトル候補だった】
鬼滅の刃1巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
当初、「鬼滅の刃」にはタイトル候補がいくつありました。
その中に「鬼がりのカグツチ」「炭のカグツチ」とあります。
このカグツチとは火の神様、すなわち古事記の火之迦具土神こと。
実は鬼滅の刃とは古事記のエッセンスがたくさん詰まった物語だったのです。
鬼滅の刃と古事記の驚くような共通点をこちらの記事で紹介しています。ぜひご覧ください。
黄泉の国で夫婦愛にヒビが入る
愛する妻を亡くして悲しみにくれるイザナギは、黄泉の国(死者の国)へ行くことにしました。
イザナギは暗闇の中でイザナミを見つけて「一緒に帰ろう」とせがみます。
しかし黄泉の国の食べ物をすでに食べたイザナミは戻ることができません。
「黄泉の国の神に帰れるようお願いしてきます。その間、決して私を見ないでくださいね」
しかし、待ちきれなかったイザナギは頭にさしていた櫛に火を灯します。
すると体からウジと雷神がなり出た醜いイザナミの姿が浮かび上がります。
「み〜た〜な〜!!(怒)」
たちまち愛が憎しみに変わり、激しい夫婦喧嘩が始まったのです。
史上最古にして最悪な夫婦喧嘩
醜い姿を見られて怒るイザナミから逃げるイザナギ。
逃してなるものかとイザナミは醜女にイザナギを追わせます。
醜女とは黄泉の国の女の鬼で、ビックリするような俊足です。
追いつかれそうになったイザナギは山ぶどうや筍をばらまきます。
食いしん坊な醜女が我を忘れてムシャムシャ食べている間に、イザナギは逃げ切りました。
しかしイザナミは次なる刺客を送ります。
【鬼滅の刃で醜女呼ばわりされた襧豆子】
鬼滅の刃2巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
愈史郎が初対面の襧豆子に対して言います。
「鬼じゃないかその女は しかも醜女だ」
醜女とは、醜い女すなわちブスです。
しかし村でも評判の美人だった襧豆子がブスなはずがありません。
これは古事記に精通した愈史郎の皮肉。
襧豆子が女の鬼で、しかも竹を加えている姿を黄泉の国の醜女に例えたのです。
愈史郎が襧豆子を醜女と言った理由をさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をお読みください。
桃は雷神をやっつける最強アイテム
醜女をなんとか振り切ったイザナギが安心したのはつかの間。
次にイザナミは雷神と1500もの黄泉の軍勢を追わせます。
イザナギは全力で逃げ、あの世とこの世の間にある黄泉比良坂に来たときのこと。
そこには、一本の桃の木がありました。
後が無いイザナギは桃の実を3つ雷神と1500の黄泉の軍勢に投げつけました。
するとどうしたことでしょう!!ヘナヘナと雷神と1500もの軍勢が倒れてしまったのです。
イザナギは桃の木にという意富加牟豆美命という名前を授けます。
そして「この世で苦しむ人々を助けるように」と使命を与えたのでした。
善逸と桃の関係は雷神に由来している
鬼滅の刃4巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
善逸の回想や夢のシーンにだけ不思議と登場する桃。
日本古来からある果樹なら柿でもいいはずです。
にも関わらず、わざわざ桃が描かれているのにはちゃんと理由があります。
その理由は、善逸が雷の呼吸の使い手だということに尽きます。
善逸は雷の呼吸の使い手だから雷神
我妻善逸はその実力とは裏腹に、臆病者で努力が大嫌いなヘタレ剣士です。
そんな善逸ですが、古事記の雷神を思わせるエピソードがあります。
1:雷の呼吸の使い手であること
2:雷の呼吸漆ノ型は「火雷神」
それでは1つずつ解説しましょう。
1:雷の呼吸の使い手であること
鬼滅の刃4巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
善逸は大の女の子好き。
そもそも鬼殺隊に入ったのも、好きな女の子に騙されたことがきっかけです。
女に貢いで借金まみれになったところを育手の爺ちゃんに引き取られました。
その爺ちゃんこそが、元柱で雷の呼吸の使い手の桑島慈悟郎だったのです。
善逸は爺ちゃんの指南を受けて、雷の呼吸の使い手になったというわけです。
そんな善逸がただのヘタレではなくなることを暗示させるシーンがあります。
善逸が厳しい修行から逃げ出して木に登っていたところ、雷に打たれ髪の色が黄色になります。
このエピソードは、まるで善逸に雷神が降臨したかのようです。(普通なら死にますからね。)
2:雷の呼吸漆ノ型は「火雷神」
鬼滅の刃17巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
雷の呼吸には六つの型がありますが、不器用な善逸が使えたのは壱ノ型「霹靂一閃」のみ。
しかし兄弟子の獪岳が上弦の陸となり、兄弟対決になったときのこと。
善逸はまさかの漆ノ型「火雷神」で獪岳を打ち破ります。
この漆ノ型「火雷神」は壱ノ型しかできなかった善逸のオリジナルの型。
すなわち善逸だけができる技です。
その技の名前が「火雷神」ということからも、善逸は雷神を思わせます。
しかし善逸は雷神ならば、桃にはめっぽう弱いはずです。
鬼滅の刃の中で善逸が桃を嫌う場面はありませんが、この矛盾は次のように考えるとスッキリ解決します。
善逸がメロメロな襧豆子は桃の木
善逸はもとから大の女の子好きです。
道ゆく女性に声をかけられれば「結婚しよう」とせがむちょっとヤバイ系。
そんな善逸が愛してやまない存在が、炭治郎の妹で鬼である襧豆子。
襧豆子を前にすると鼻の下を伸ばし、まさに骨抜きの状態になります。
善逸が最も弱い相手は、襧豆子と言っても過言はありません。
そんな襧豆子の存在は古事記の中でイザナギを助けた桃の木と共通点があります。
1:名前に「豆」の文字が入っている
2:苦しむ人を守るのが使命になった
1:名前に「豆」の文字が入っている
週刊少年ジャンプ2020年1号 鬼滅の刃 第175話©吾峠呼世晴/集英社 より引用
古事記の中でイザナミを救った桃の木の名前は「意富加牟豆美命」でした。
襧豆子と同じく名前に「豆」が入っています。
豆は古来より魔を滅する(魔滅)とされ、鬼を退治する効果があるので節分で撒かれてきました。
ちなみに神社やお寺で配られる節分用の豆は、次のような祝詞を挙げられたものです。
イザナギを助けた桃の実の霊力を豆にも授けてください。
このように古事記を読み聞かせをされた豆こそが、鬼を払うパワーを持ちます。
ちなみに襧豆子の「襧」は、「父の霊をまつる所」と言う意味。
襧豆子という名前の中に、鬼を滅するだけでなく父の意思をも引き継いでいるのです。
2:苦しむ人を守るのが使命になった
鬼滅の刃2巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
古事記の中で桃の木は、イザナギに次のような使命をもらいます。
「私を助けたように、この世で苦しむ人々を助けなさい」
これは鬼の襧豆子も全く同じです。
炭治郎の育手である鱗滝左近次は、襧豆子に次のような暗示をかけました。
・人間は皆お前の家族だ
・人間を守れ鬼は敵だ
・人を傷つける鬼を許すな
襧豆子もイザナギを助けた桃の木も、ともに苦しむ人を助けるのが使命になりました。
善逸と襧豆子は雷神と桃の木の深イイ関係
鬼滅の刃16巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
善逸の回想や夢のシーンには、なぜか桃が登場します。
・桃の実で倒れた雷神は善逸
・雷神をヘロヘロにした桃の木は襧豆子
このように古事記と重ねて考えると、善逸の回想や夢の場面だけに桃が登場するのか納得がいきます。
また鬼滅の刃には可愛い女性隊員もたくさん登場するのに、善逸が襧豆子一筋な理由もわかります。
善逸が雷神だから桃の木を意味する襧豆子に骨抜きなのです。
鬼滅の刃の物語を古事記に重ね合わせると、他にも驚くような共通点が見つかります。
鬼滅の刃と古事記の共通点を知りたい方はこちらの記事をぜひご覧ください。
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