炭治郎の耳飾りの意味|ヒノカミ神楽と共に引き継がれた約束の証

炭治郎の花札のような「耳飾り」は、亡き父・炭十郎たんじゅうろうの形見です。

炭治郎の家は代々炭焼き小屋ですが、先祖代々引き継がれている大切なものが2つありました。

この2つは共に竈門家にとって絶対に絶やしてはいけないと「約束された」大切なものでした。

この記事では、炭治郎の耳飾りに込められた深すぎる意味を400年もの歴史を遡って解説します。

また耳飾りとともに継承された「ヒノカミ神楽」の驚くべき真実も明らかにしています。

男同士の固い約束に、感動すること間違いなしです。

父から受け継ぐ耳飾りとヒノカミ神楽

鬼滅の刃5巻©吾峠呼世晴/集英社　より引用

炭治郎が幼いころ、父・炭十郎に次のように言われます。

「耳飾り」とは、炭治郎が肌身離さずつけている花札のような耳飾りです。

そして「ヒノカミ神楽」とは、父親が必ず年の初めに火の神様に捧げるため舞っていた神楽のこと。

しかし、父が言う「約束」については炭治郎は聞かされていませんでした。

一体、誰と誰がどんな約束をして、この「耳飾り」と「ヒノカミ神楽」を竈門家が継承することになったのか？

その秘密を次に解説します。

耳飾りとヒノカミ神楽は戦国の剣士から

鬼滅の刃20巻©吾峠呼世晴/集英社　より引用

炭治郎がつけている耳飾りは、戦国時代を生きた一人のの鬼殺の剣士のものでした。

炭治郎が生まれる400年以上前に、竈門家の先祖がこの剣士から「耳飾り」と「ヒノカミ神楽」を引き継いだのです。

その剣士の名前は、継国縁壱つぐくによりいちと言います。

縁壱は鬼殺隊の剣士であり、すべての呼吸の元となる「始まりの呼吸」である「日ひの呼吸」の使い手でした。

天才剣士・継国縁壱の誕生

鬼滅の刃20巻©吾峠呼世晴/集英社　より引用

戦国時代のある武士の家に、双子の兄弟が生まれます。

兄の名前は厳勝みちかつ・弟の名前は縁壱よりいちです。

当時、双子は跡目争いの原因になるので不吉とされ、さらには縁壱の額には生まれつき不気味な痣あざがありました。

父親は将来の災いになると考え、まだ赤ん坊の縁壱を殺そうとします。

しかし母親が猛反対したため、縁壱は殺されずに10歳になったら寺に出家することになりました。

そして弟だった縁壱は、家の跡取りとなる兄の厳勝とは大きく差をつけられて育てられます。

住む場所・教育・食べ物さえも別にされ、質素な暮らしを強いられたのです。

生まれながらの天才剣士・縁壱

鬼滅の刃20巻©吾峠呼世晴/集英社　より引用

兄の厳勝は家の大事な跡取り息子。

幼い頃から剣術を学び、侍になるために毎日練習をしています。

一方、10歳で寺に行くことになっている縁壱は、剣術とはまったく無縁。

ただ兄が練習するのを木の陰から眺めているだけでした。

しかしある日、珍しく縁壱は自分から剣を教えて欲しいと言います。

兄の厳勝に稽古をつけていた父親の輩下に当たる武士は、ほんの遊びのつもりで縁壱に竹刀を持たせて打ち込ませました。

鬼滅の刃20巻©吾峠呼世晴/集英社　より引用

すると驚くことに、縁壱はその武士を一瞬で失神させます。

今まで一度も剣を握ったことがないにも関わらず、相手の武士に瞬間的に四発打ち込んでいたのです。

誰に習った訳でもなく、縁壱は生まれながらに天才的な剣の才能があったのです。

それを目の当たりにした兄の厳勝は、弟の才能に恐怖と嫉妬を覚えます。

しかし縁壱はその結果に喜ぶどころか、人を打つことを不快に感じ、剣を握るのをやめてしまいました。

耳飾りは縁壱の母が作ったお守りだった

週刊少年ジャンプ2020年2号 鬼滅の刃 第186話©吾峠呼世晴/集英社　より引用

縁壱は幼いながらも自分の立場をわきまえていたため、口を利かずに育ちました。

余計なことを言えば、自分をいつも庇ってくれる母や兄に迷惑がかかると思ってのことでした。

しかし、口を聞かない縁壱を母親は耳が聞こえないと勘違いします。

信仰心が強かった母親は、縁壱の耳が聞こえるようにお守りの耳飾りを作りました。

母は思いをこめて、太陽の絵が描かれた耳飾りを作ったのです。

これこそが、のちに炭治郎が引きつづことになる花札のような「耳飾り」です。

縁壱は母が病死した後に、大好きな兄だけの別れを告げてと家を出ました。

何のしがらみも無くなった縁壱は、寺には行かずに一人で一晩中山の中を走り抜けます。

縁壱が鬼殺隊になる悲しいきっかけ

週刊少年ジャンプ2020年2号 鬼滅の刃 第186話©吾峠呼世晴/集英社　より引用

家を飛び出し自由の身となった縁壱は、見知らぬ里で一人の女の子に出会います。

その子の名前は「うた」と言い、家族を流行病で亡くして一人ぼっちで悲しみにくれていました。

縁壱はうたと寄り添うように共に暮らすようになり、10年後に夫婦になりました。

やがて、うたのお腹には赤ちゃんが宿ります。

赤ん坊の誕生に備え、縁壱が産婆を呼びにいって帰ってきたその時、その幸せは踏みにじられました。

週刊少年ジャンプ2020年2号 鬼滅の刃 第186話©吾峠呼世晴/集英社　より引用

うたはお腹の子もろども、鬼に食い殺されていたのです。

家族と静かに平凡に暮らすという、縁壱の願いは叶わぬものとなりました。

縁壱は呆然とうたと子供の亡骸を抱き続け何日かったときのこと、鬼殺隊の剣士が家を訪ねてきます。

そこで初めて縁壱は人の幸せを奪う「鬼」の存在と、その鬼を撃つ「鬼狩り」を知ることになりました。

もともと剣の天才的な才能があった縁壱でしたが、争いが嫌いでした。

しかし、自分のような悲しみを他の人に味わせないために「鬼狩り」になることを決めたのです。

「日の呼吸」が「始まりの呼吸」となる

週刊少年ジャンプ2020年2号 鬼滅の刃 第186話©吾峠呼世晴/集英社　より引用

鬼殺隊の剣士になった縁壱は、惜しみなく「呼吸」を使う方法を伝授していきまます。

というのも、鬼殺隊の剣士の誰も「呼吸」が使えるものがいなかったからです。

呼吸さえ使えれば身体能力が飛躍的に向上し、鬼を倒す破壊力が増します。

縁壱はそれぞれの剣士の型に上乗せして、能力に適した呼吸法を指導していきました。

そうやって縁壱の「日の呼吸」から、「炎」「水」「雷」「雷」「岩」の呼吸が生まれたのです。

この「日の呼吸」こそが、全ての呼吸のはじまりであることから「始まりの呼吸」と呼ばれるようになりました。

呼吸のおかけで鬼殺隊は、凄まじい勢いで鬼を倒せるようになっていったのです。

双子の兄・厳勝との運命の再会

週刊少年ジャンプ2019年46号 鬼滅の刃 第178話©吾峠呼世晴/集英社　より引用

鬼がりとなった縁壱には、思いがけない再会が待っていました。

それは幼い頃に離れ離れになった双子の兄・厳勝とのまさかの遭遇。

武士となった兄・厳勝が野営中に鬼に襲われていたのを、通りがかった縁壱が助けたのです。

母の死後に家を出て行って以来、消息を絶っていた縁壱が生きていたことに兄・厳勝は驚きます。

しかしそれ以上に厳勝は縁壱の圧倒的な強さに焼けつくような嫉妬を覚えたのです。

そして兄の厳勝は縁壱のように強くなることを望んで、家族を捨ててまで「鬼狩り」になります。

二人は共に鬼殺隊として力を合わせて戦い、また後輩の指導に当たっていきました。

宿敵！鬼の始祖・無惨との戦い

週刊少年ジャンプ2020年2号 鬼滅の刃 第186話©吾峠呼世晴/集英社　より引用

鬼殺隊の剣士となったある日のこと、縁壱は鬼の始祖である鬼舞辻無惨きぶつじむざんと遭遇します。

それはまったくの偶然、しかし逃れられない運命でもありました。

縁壱は出会った瞬間、無惨が鬼の始祖であり、全ての悪の根源であることを見抜きます。

そして「自分はこの無惨を倒すために、生まれてきた」と直感しました。

縁壱は渾身の一撃を振るい、無惨を死の淵まで追いやります。

鬼滅の刃21巻©吾峠呼世晴/集英社　より引用

しかし止めを刺す前に、無惨は自分の体を分裂させて飛び散ります。

つかさず縁壱はその肉の破片を切り刻みますが、あまりの数の多さに全てを撃つことはできません。

その結果、無惨はわずかばかりの肉の塊となりましたが、生きながらえることに成功したのです。

無惨に止めを刺し損ねたことを悔やむ縁壱に、さらに追い討ちをかける出来事がおきます。

大好きだった兄・厳勝が鬼となる

週刊少年ジャンプ2019年46号 鬼滅の刃 第178話©吾峠呼世晴/集英社　より引用

無惨を取り逃がしたことで無力感に打ちひしがれる縁壱。

そんな中、縁壱は耳を疑いたくなるような報告を鬼殺隊の仲間から聞かされます。

兄の厳勝が鬼殺隊の当主である親方様の首を切って、鬼になったというのです。

厳勝が鬼になった理由は、縁壱の天才的な剣術や非の打ち所のない人格に嫉妬してのこと。

自分のせいで兄を鬼にしてしまったと、縁壱はより一層自分を攻めたてて苦しみます。

そして無惨を取り逃がし、さらには兄・厳勝が鬼になった責任から、縁壱は鬼殺隊を追われました。

一方鬼となった兄は、後に上弦の壱いち・黒死牟こくしぼうとなり、無惨の右腕となっていきます。

炭治郎の先祖に耳飾りを託す

週刊少年ジャンプ2020年2号 鬼滅の刃 第186話©吾峠呼世晴/集英社　より引用

鬼舞辻無惨を取り逃がし、さらには血を分けた兄・厳勝が鬼なったことで、激しく自分を責める縁壱。

鬼殺隊も追われ行くあてもない中、縁壱は気がつくとある家を訪ねていました。

それは昔、縁壱が愛する妻「うた」と生まれて来るはずだった「子供」と暮らしていた家です。

縁壱が家を離れた後、偶然にもこの家には炭治郎の先祖・炭吉すみきちの家族が住むようになっていました。

自分を許せない縁壱は救いを求め、幸せに暮らす炭吉とその家族を求めて会いに行ったのです。

炭治郎の先祖と縁壱の出会い

鬼滅の刃22巻©吾峠呼世晴/集英社　より引用

縁壱にとって幸せな思い出と、一番辛い思い出のあるかつて妻の「うた」と暮らした家。

ずっと空き家となっていましたが、偶然通りがかった炭治郎の先祖・炭吉とその妻・すやこが住むようになりました。

家を出て鬼殺隊になった縁壱は、炭吉が住んでいるとは知らずに、懐かしさからかつての家を過去に訪ねています。

まさにその時、炭吉と臨月の妻・すやこがまさに鬼から襲われている最中だったのです。

今にも二人が殺される寸前のところ、縁壱は鬼を退治しただけでなく、急いで産婆を呼びに行きました。

週刊少年ジャンプ2020年2号 鬼滅の刃 第186話©吾峠呼世晴/集英社　より引用

このおかげで炭吉とすやこは命拾いしただけでなく、娘のすみれまで授かったのです。

縁壱にとっても、自分の愛する妻「うた」にできなかったことができて嬉しい出来事でした。

無惨を取り逃がした縁壱にとって、大きな慰めとなったのです。

このことをきっかけに、縁壱にとって炭吉は数少ない心を許せる相手となりました。

自分を責める縁壱に寄り添う炭吉

鬼滅の刃21巻©吾峠呼世晴/集英社　より引用

自分の過去のしくじりを振り返り、痛いほどに自分を責める縁壱。

その話を聞いた炭吉は、縁壱の背負っている重荷の大きさにかける言葉が見つかりません。

この時、炭吉の娘・すみれが何もわからないなりに、縁壱に「抱っこ」をせがみます。

縁壱がいたからこそ生まれてきた尊い命、幸せで純粋さの塊である「すみれ」。

そんな光のように眩い「すみれ」を抱いた瞬間、縁壱は今まで抑えていた感情が溢れ出しました。

目に見えない決壊が崩れたかのように、縁壱の目から涙が溢れ、その場に崩れ落ちたのです。

滅多に自分の感情を表に出さない縁壱が、これほどまでに人前で涙するのはよっぽどことした。

未来に託された日の呼吸と耳飾り

週刊少年ジャンプ2020年10号 鬼滅の刃 第192話©吾峠呼世晴/集英社　より引用

泣き止んだ縁壱は、炭吉の妻・すやこにせがまれて「日の呼吸」の剣の型を見せました。

縁壱が振るう「日の呼吸」の型はあまりにも美しく、まるで精霊が舞うかのよう。

炭吉はその美しい型を忘れまいと、瞬きするのも忘れて目に焼き付けました。

そして縁壱は別れ際に、母がお守りで作ってくれた「耳飾り」を炭吉に差し出します。

自分の心を救ってくれた炭吉への感謝と、またこの家族の幸せをずっと守ってくれるようにと願ってのことでした。

週刊少年ジャンプ2020年10号 鬼滅の刃 第192話©吾峠呼世晴/集英社　より引用

縁壱にとって耳飾りは、幼い頃から大切にしてきた母の形見。

そんな大切な耳飾りを受け取りながら、炭吉はこれが縁壱と会うのが最後だと直感します。

これから先も縁壱が、抱えきれないほどの心の重荷を背負ったまま一人で生きていくだろう。

そして本当はいつだって、自分の無力感と過去への後悔で叫び出したいほどに苦しいはず。

そう感じた炭吉は、去っていく縁壱の向かって泣きながら叫びます。

週刊少年ジャンプ2020年10号 鬼滅の刃 第192話©吾峠呼世晴/集英社　より引用

炭吉は縁壱がいてくれたからこそ、命を繋ぐことができたのです。

この恩を決して忘れないよう、そしてきっといつか縁壱の無念を晴らす。

自分の代では無理かもしれないが、後に繋ぐことで誰かが必ず果たしてくれるはずた。

炭吉はそんな思い出「耳飾り」と「日の呼吸」を継承すると宣言したのです。

炭治郎に受け継がれた「耳飾り」と「ヒノカミ神楽」

縁壱が炭吉に「耳飾り」と「日の呼吸」を託した日から、およそ400年もの時間が経ちました。

炭治郎は父・炭十郎から、絶対に絶やしてはならない「耳飾り」と「ヒノカミ神楽」を受け継ぎます。

これがまさか「はじまりの呼吸」の剣士である縁壱から受け継いだものとも知らずにです。

家族を鬼に殺され、唯一生き残った妹・襧豆子を鬼にされたため、自ら鬼狩りになった炭治郎。

これは、ただの運命のいたずらではなかったのです。

炭治郎の耳飾りは無惨の脅威となる

鬼滅の刃2巻©吾峠呼世晴/集英社　より引用

炭治郎が鬼狩りになって間もないころ、偶然にも東京・浅草で鬼の始祖・鬼舞辻無惨に遭遇します。

その時、無惨は炭治郎の耳飾りを見て、縁壱の亡霊をみたかのような恐怖を感じます。

かつて自分を追い込んだ唯一の剣士である縁壱。

その「耳飾り」をつけた鬼狩りである炭治郎は、無惨にとって決して生かしておくことができない存在だったのです。

日の呼吸はヒノカミ神楽として継承

鬼滅の刃5巻©吾峠呼世晴/集英社　より引用

縁壱の「日の呼吸」の型は、まるで精霊が舞っているかのような美しさでした。

剣術の心得のない炭焼きの炭吉は、その美しい「日の呼吸」の型を「ヒノカミ神楽」として後世に伝えます。

それは代々炭焼きをする竈門家の子孫に、途絶えることなく正確に伝わっていきました。

正しい呼吸と、神楽のように美しい型は驚くほど正確に400年もの時を超えて継承されていたのです。

そして炭治郎が鬼殺隊の剣士になったことで、「ヒノカミ神楽」は「日の呼吸」として復活することになります。

耳飾りとヒノカミ神楽は400年以上続く約束の証

週刊少年ジャンプ2020年10号 鬼滅の刃 第192話©吾峠呼世晴/集英社　より引用

竈門家に代々引き継がれてきた「耳飾り」と「ヒノカミ神楽」。

これは単なる形見ではなく、「鬼のいない平和な世の中を作る」と言う壮大な約束だったのです。

400年以上も前に、無惨を後一歩のところまで追い詰めたにも関わらず取り逃がした縁壱。

この縁壱の無念と美しいこの世界を守りたいと言う意思を、炭治郎の先祖である炭吉が引き継いだのです。

週刊少年ジャンプ2020年10号 鬼滅の刃 第192話©吾峠呼世晴/集英社　より引用

一代では到底成し得ないことでも、諦めさえしなければきっと誰かが果たしてくれる。

そう願って400年以上もの時を超えて、炭治郎に「耳飾り」と「ヒノカミ神楽」は託されたのです。

運命のいたずらか、無惨に家族を惨殺され、妹・襧豆子を鬼にされた炭治郎は鬼殺の剣士となりました。

この悲劇とも思える出来事は、炭治郎が鬼舞辻無惨を倒すために起きた必然だったのです。