煉獄杏寿郎｜母の名前「瑠火」と苗字が暗示するキリスト教との関係

鬼滅の刃は古事記の影響を色濃く受けた作品の様で、古事記や神道をモチーフにしたと思われる設定が数多く見られます。

ところが炎柱・煉獄杏寿郎の周辺からは、なぜかキリスト教を暗示するものがいくつも見つかります。

例えば母の名前「瑠火（るか）」は聖人ルカと同一であり、苗字の「煉獄」はキリスト教の用語であるという具合です。

この記事では、煉獄杏寿郎とキリスト教の関係について考察しています。

まさに日本男児とも言うべき煉獄杏寿郎とキリスト教という意外な組み合わせですが、どうぞ最後までご覧下さい。

煉獄杏寿郎とキリスト教の関連を示すものごと一覧

鬼滅の刃8巻©吾峠呼世晴/集英社　より引用

煉獄杏寿郎とキリスト教に関連する主なものごとの一覧です。

聖人と同じ名前を持つ煉獄杏寿郎の母

鬼滅の刃8巻©吾峠呼世晴/集英社　より引用

煉獄杏寿郎の母の名前は瑠火

煉獄杏寿郎の母は瑠火（るか）。聖人ルカと同じ名前をしています。

これは偶然同じ名前になったのではなく、作者が敢えて瑠花という名前を選んだと考えられるのです。

その根拠は、瑠火が子供に施した教育の内容にありました。

煉獄杏寿郎の人格を形成した聖人ルカの教え

鬼滅の刃8巻©吾峠呼世晴/集英社　より引用

瑠花は煉獄槇寿郎（元炎柱）との間に、杏寿郎と千寿郎の２人の男の子をもうけました。

若くしてこの世から去った瑠火は、幼い頃の杏寿郎に「才に恵まれたものは世のため人のために使わなければならない」「弱き人助けることは強く生まれた者の責務」と諭しています。

その結果、剣技に秀でた杏寿郎は炎柱として人々を鬼の脅威から守り、また下級隊士達からも慕われる様な面倒見の良さを身につけました。

実は瑠火が杏寿郎に諭した教えは、欧米社会の特にキリスト教文化圏に浸透する「ノブレス・オブリージュ（nobless oblige）」の考え方そのものです。

19世紀のフランスで生まれたこの言葉は、直訳すると「高貴なものの義務」。一般的には「財産や権力、地位を有する者にはある種の責任が伴う」ことを意味します。

そしてこのノブレス・オブリージュの由来には、聖人ルカが関わっていたのです。

新約聖書（ルカによる福音書）の12章48節では、「すべて多く与えられた者は、多く求められ、多く任された者は、さらに多く要求される」と説いています。

つまり母を通して学んでいたルカの福音書こそが、煉獄杏寿郎の人格形成における原点だったのです。

「煉獄」とは火で死者の魂を浄化する場所のこと

鬼滅の刃7巻©吾峠呼世晴/集英社　より引用

炎柱として炎の呼吸を使いこなす煉獄杏寿郎の「煉獄」とは、キリスト教のカトリック系の言葉です。

カトリックの教理で、小罪を犯した死者の霊魂が天国に入る前に火によって罪の浄化を受けるとされる場所、およびその状態。天国と地獄の間にあるという。　出典：デジタル大辞泉

無限列車の中で眠らされた煉獄杏寿郎の無意識領域に入り込んだ少女が、「熱い・・・燃えてる」と言っていましたが、これはまさに「煉獄」を表していたのです。

鬼滅の刃16巻©吾峠呼世晴/集英社　より引用

また、鬼と対峙した煉獄杏寿郎が発した「この煉獄の赫き炎刀がお前を骨まで焼き尽くす‼︎」という言葉。これは火で罪を浄化するという「煉獄」のイメージとぴったり重なるのです。

煉獄杏寿郎が亡くなる66話の持つ意味

鬼滅の刃8巻©吾峠呼世晴/集英社　より引用

煉獄杏寿郎が猗窩座との激闘の末にその命を落としたのは、第66話「黎明に散る」でした。

この66、実はキリスト教関係者にとってはとても意味を持つ数字で、聖書の数と一致しているのです。（聖書は旧約聖書が39巻、新約聖書が27巻の合計66巻。）

たまたまと言えばそうかもしれません。しかし、キリスト教用語でもある煉獄を苗字とし、母の名前が聖人ルカと一緒となってくると、作者が狙って一致させた様にも思えます。

なおヨーロッパの宗教画では重要な人物の背後に光背（後光）がよく見られます。そのことを頭に入れた上で第66話の扉絵を見てみると、まさに煉獄杏寿郎が神々しく輝いています。

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大天使ミカエルを想起させる煉獄杏寿郎

煉獄杏寿郎の名前の音読みは「あんじゅろう」。そしてイタリア語やポルトガル語には、「アンジェロ（angelo）」という、天使の意味を持つ男性名があります。

この「アンジェロ」、発音を聴くとビックリする位に「あんじゅろう」とよく似ています。

angeloの発音をGoogle翻訳で聴いてみる

鬼滅の刃外伝©平野稜二（吾峠呼世晴）/集英社　より引用

煉獄杏寿郎が天使を想起させる要素は他にもあります。それが、炎柱である煉獄杏寿郎が身に付けている羽織です。

羽織とは通常、袖を通して着るもの。しかし煉獄家に伝わる炎柱用の羽織は特殊で、袖のないマント型をしています。（マントは、イエズス会の宣教師が日本に伝えた南蛮文化の１つです。）

さらにこの羽織には炎の模様と裾の切り込みがあり、煉獄杏寿郎の戦闘中に左右に広がった様子は、あたかも天使の羽根のようにも見えます。

鬼滅の刃8巻©吾峠呼世晴/集英社　より引用

天使と言うと、ニコニコと微笑む羽根の生えた子供の姿を思い浮かべるかもしれません。しかし中には悪と立ち向かう強い天使もいます。それが大天使ミカエルです。

「大天使ミカエル」（グイド・レーニ画）

剣を持って悪魔と戦ったという大天使ミカエルの姿は、剣を手にして鬼と戦う煉獄杏寿郎の姿とどこか重なります。

そして煉獄杏寿郎が猗窩座に対して最初に放った技の名前を覚えていますか？

鬼滅の刃8巻©吾峠呼世晴/集英社　より引用

この「炎の呼吸　弐の型　昇り炎天」という技の名前の中にも、「昇天」（キリストが復活して天に昇る）というキリスト教の言葉が隠されています。

煉獄杏寿郎の趣味にも隠されたキリスト教

週刊少年ジャンプ2020年46号 鬼滅の刃外伝©平野稜二（吾峠呼世晴）/集英社　より引用

煉獄杏寿郎とキリスト教という設定は、なんと彼の趣味にも反映されていました。

煉獄杏寿郎の趣味は、「相撲観戦」「歌舞伎」「能」の３つ。このうち相撲のルーツは、旧約聖書の中にあります。

また「歌舞伎」と「能」には、いずれもキリスト教との歴史的な関わりが見られるのです。

煉獄杏寿郎の趣味「相撲」のルーツは旧約聖書の中の格闘

「天使とヤコブの闘い」（ウジェーヌ・ドラクロワ画）

日本の国技とも言える相撲のルーツ、実は旧約聖書に登場するヤコブと天使の格闘だという説があります。

古代史の研究者・中島尚彦氏の記事の説明が分かりやすいので、今回参考にしています。
元貴乃花親方が語る相撲ユダヤ説の真相！相撲の語源は果たしてヘブライ語に由来？

それによれば、相撲という言葉はもともと「シュモー」というヘブライ語で、「彼の名前」を意味していました。

旧約聖書の中でヤコブと天使が格闘し、お互いに「名前を名乗れ」と叫びます。自分の名前を告げるヤコブに対し、決して名乗らない天使。

ヤコブは「シュモー（彼の名前）」を知ることができなかったものの、天使との格闘に勝利。やがてこの「シュモー」が格闘を象徴する様になったと言うのです。

なお「はっけよい、のこった」という行司の掛け声は、ヘブライ語で「やっつけるぞ・打ち倒せ」の意味を持つそうで、これも偶然の一致とは考えにくいものがあります。

鬼滅の刃外伝©平野稜二（吾峠呼世晴）/集英社　より引用

煉獄杏寿郎の趣味「歌舞伎」「能」にキリスト教の歴史的関わり

煉獄杏寿郎の趣味には、「歌舞伎」と「能」もありますが、実はどちらもキリスト教と歴史的な関わりがあります。

歌舞伎図巻（部分）　徳川美術館蔵　（文化遺産オンラインHPより引用）

歌舞伎の始まりは「出雲の阿国」が1600年頃に京の都で踊った「かぶき踊り」。

当時の様子を描いた「歌舞伎図巻」（17世紀前半）には、十字架を胸にかけた阿国の従者・采女が描かれています。

これには阿国と言う女性がキリシタンだったと言う説や、ロザリオを最先端のファッションアイテムとして取り入れたと言う説、宣教師が各地で行った聖劇に影響を受けたという説などがあります。

キリシタン能「聖パウロの回心」（CHRISTIAN TODAY HP より引用）

一方の「能」については、観世流宗家の二十六世観世清和氏が「戦国から江戸時代にかけてキリスト教を題材にしたキリシタン能が上演されていた様だが、禁教とされて途絶えてしまった」と語っています。（立教学院HPより）

観世氏は若い頃からキリシタン能について興味を持っており、能に造詣の深い国文学者・林望氏に台本を依頼して「能　聖パウロの回心」を完成させます。

このキリシタン能は、2012年に立教大学タッカーホールで初演。その後も観世能楽堂などで演じられています。

なぜ煉獄杏寿郎とキリスト教が絡む？

　鬼滅の刃6巻©吾峠呼世晴/集英社　より引用

この記事の冒頭でお伝えした様に、鬼滅の刃は古事記や神道などの影響を色濃く受けており、それらをモチーフにしたと思われる設定が数多く見られます。

古事記は日本最古の歴史書。多くの日本神話を伝えており、神道にとっては日本書記などと並ぶ神典（キリスト教の聖書やイスラム教のコーランの様な存在）の１つとされています。

そんな中、なぜ煉獄杏寿郎本人及び周辺にはキリスト教に関係する設定が多いのでしょうか。

その謎を解く鍵となるのが、日本の古代史です。

古代の日本には多くのユダヤ人が渡来しており、古事記や神道、日本語などに、キリスト教の聖典である旧約聖書やその原文で使われたヘブライ語との共通点が数多くあるのです。

古代日本に渡来していたユダヤ人

古代日本にユダヤ人が数多く渡来していたと聞くと、驚く方も多いかもしれません。

それもそのはず、私たちが習っていた歴史の教科書では、朝鮮半島や中国大陸から渡来人がやってきたと書かれてはいたものの、ユダヤ人の渡来なんて一言も記されていなかったからです。

ところが日本の言葉や風習にはユダヤ人のものとの共通点が多く見られることから、一部の学者はユダヤ人の渡来を主張。しかしそれはあくまでもマイナーな扱いでした。

ユダヤ人埴輪が古墳から出土

近年になって、千葉県の芝山古墳などから出土した埴輪の姿がユダヤ人であるという主張を、田中英道・東北大学名誉教授がいくつかの著書で行なっています。

田中教授の専門は西洋美術史。その視点からすると、千葉県や埼玉県などの古墳からは、日本人とは思えない顔立ちや特徴の埴輪が出てきており、それがユダヤ人埴輪だというのです。

埴輪の中には、異常に鼻が高い人物埴輪があり、飛鳥時代以降の日本人の姿とあまりにも異なっています。特殊な冠やひさしのある帽子を被り、耳元には鬢びん、つまり美豆良みずらがついており、顎髭あごひげを生やしています。これはつまり、日本の古墳時代にユダヤ系の人々がいたことを端的に示しており、こういった特徴をもつ人物埴輪は、千葉県や茨城県など主に関東で発掘されています。
日本史を変える30の新発見　ユダヤ人埴輪があった！   田中英道著/育鵬社　より引用

日本史を変える30の新発見　ユダヤ人埴輪があった！   田中英道著/育鵬社　より引用

日本史を変える30の新発見　ユダヤ人埴輪があった！   田中英道著/育鵬社　より引用

特に目につく美豆良（両耳の前の髪の毛を伸ばして束ねたりカールさせたもの）ですが、田中教授によれば、中国や朝鮮に見られない日本独特の髪型であり、古代ユダヤ人の髪型とのこと。

旧約聖書では異教徒との区別を目的として、「あなた方の頭のびんの毛（こめかみ）を切ってはならない。ヒゲの両端を損なってはならない。」（レビ19・27）と書かれていました。

現代でもこの古代からの風習を守っている宗派では、この両耳の前の毛を伸ばす「ペイオト 」と言う風習が見られます。

月刊レムナント2019年6月号　レムナント出版　より引用

さらに田中教授は、日本人のDNAがユダヤ人と近いことを、「発見！ユダヤ人埴輪の謎を解く　勉誠出版」の中でウイルス学者の崎谷満氏の著書を参考にして紹介しています。

その内容を簡単にまとめると、「DNAの系統が日本人は中国人・韓国人とかなり違う」「「YAP」という染色体の特徴的な変異が、日本人に多いD系統とユダヤ人が属するE系統のみに存在する」とのこと。

遺伝子学の立場からも、古代にユダヤ人が日本に来ていたことになるというのです。

ユダヤ人の秦氏が日本に入り込んだ

秦氏は全国の神社の大半をつくった（写真は伏見稲荷大社）

田中教授によれば、朝鮮半島や中国よりも西方から多くの人が日本に波状的に渡来。その中でも重要なのが秦氏とし、日本に帰化したキリスト教ネストリウス派の氏族でユダヤ人だといいます。

秦氏の先祖は、日本書紀にも記述のある「弓月君ゆづきのきみ」。第15代天皇の応神天皇の時に、百済から大勢の人々を率いてやってきました。

彼等の元々の出自は、中国の西に位置するカザフスタンの辺りにかつて存在していた弓月国。ここに多くいたのが、ユダヤ人景教徒（キリスト教ネストリウス派）だったのです。

はるか昔、自分達の国を追われる身となったユダヤ人。その中には、旧約聖書に書かれている東の国を目指してシルクロード沿いに東へ、東へと移動した人達も多かった様です。

日本にたどり着いた秦氏は、機織りや土木建築、徴税など様々な技術や能力を持っており、次第に力を持つ様になって国家運営にも深く関わっていきます。

その過程で日本に同化していった秦氏は全国の神社の大半をつくったともいわれており、言葉や風習などの方面にも影響を残しました。

煉獄杏寿郎とキリスト教の不思議な関連

鬼滅の刃外伝©平野稜二（吾峠呼世晴）/集英社　より引用

古事記や神道にまつわるモチーフがオンパレードの鬼滅の刃において、煉獄杏寿郎とキリスト教との関連は、一見すると奇妙に思えるものでした。

しかし古事記や神道などにも古代ユダヤ人の影響が見られることを考えると、それほど不思議なことではないのです。

煉獄家は代々炎柱を輩出して来た家柄であり、長く続いてきた名家。古代ユダヤ人文化やキリスト教が伝わっていてもおかしくはありません。

そしてそれが顕著になっていたのが、母親・瑠火が杏寿郎に伝えていた聖人ルカの教えであり、杏寿郎の口ぐせ「わっしょい」だったと言えます。

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