鬼の始祖・鬼舞辻無惨は、最強かつ全ての鬼の生みの親。
そんな残酷極まりない鬼の無惨も、この世に生を受けたときは人間だったのです。
意外なことに、無惨は二十歳になるまで生きられないと医者が言うほど病弱でした。
死の恐怖に怯え、自由のきかない己の体に苛立ち、床に伏せる日々に心身が蝕まれていきます。
しかし無惨にとっての本当の悲劇はここからが始まりでした。
病気を直すために医師が作った薬で、無惨は鬼と化したのです。
この記事では、人間だった無惨の過去や、鬼になった経緯を詳しく解説しています。
鬼舞辻無惨の過去|平安時代に人として生まれた
鬼滅の刃23巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
鬼舞辻無惨は平安時代に、産屋敷の一族の一人として生まれました。
無惨の人間った時の名前は不明ですが、名字が産屋敷だった可能性が高いです。
無惨は生まれる前、母親の体の中で何度も心臓が止まり、生まれた時には呼吸も脈もありませんでした。
医者から死産と言われた無惨は、それでも生きることを渇望します。
その「生きる」ことのへの執念が、火葬される寸前の無惨に産声をあげさせたのです。
「死」から始まった無惨の人生は、「生」に対する飽くなき欲求の始まりでした。
鬼舞辻無惨の過去|病に苛立ちを募らせる日々
鬼滅の刃23巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
成長してからも無惨の体は極めて病弱で、床に伏せる毎日を強いられていました。
医者からは二十歳まで生きられないと言われ、忍び寄る死に怯えながら生きる日々。
また思うようにならない自分の体にもイライラし、心も体も蝕まれていきます。
病弱な自分の体を恨むばかりか、健康な人をも妬み、コンプレックスと嫉妬の塊と化しました。
その深い心の闇が、無惨を自己中心的で恐ろしく残酷な人間にしていったのです。
無惨の毒舌と相手の心を抉る言葉の暴力は凄まじく、平安時代には娶った妻が5人も自殺しています。
こうして無惨は死と隣り合わせの恐怖の中で、生きることに強い執着を持つようになりました。
鬼舞辻無惨の過去|病気を治すはずの薬で鬼化
鬼滅の刃15巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
無惨には腕の良いお付きの医師がいました。
医師は病弱な無惨のために、特別な薬を調合して飲ませ続けます。
しかし、一向に病状が良くならないことに腹を立てた無惨は、この善良な医者を殺してしまったのです。
これが悲劇の始まりでした。
病弱な人間から不死身の鬼への変貌
鬼滅の刃15巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
無惨は医者が死んでしばらくして、自分の体の異変に気がつきます。
人間を超越した強靭な肉体を手に入れ、人の血肉を欲するようになったのです。
もともと他人の命など顧みない残酷な性格だった無惨は、人を食らうことになんの躊躇いもありません。
ただ一つだけ問題は、日光の下を歩けなくなったことでした。
これは無惨を鬼にした医師が作った薬の副作用のせいだったのです。
鬼滅の刃15巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
あれほど求めていた強い肉体を手に入れたというのに、太陽の下を歩けない。
鬼となった無惨は、さらに苛立ちを募らせ怒りに震えます。
その激しい怒りから、無惨は「何としても日の光を克服する」と執念を燃やすこととなったのです、
不死身の鬼となっても日の下を歩けぬ苦悩
鬼滅の刃15巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
無惨は医師が残した薬の記録を必死で調べ、日光を克服する方法を探ります。
無惨を鬼にした薬の名前は「青い彼岸花」といい、実際に薬の成分の中に「青い彼岸花」が入っていました。
しかし薬が完成する前に無惨が医師を殺したため、日の下を歩けないという重大な副作用があったのです。
青い彼岸花を採取し薬を完成させれば、無惨は日光をも克服した完全無敵の体になれます。
日の下を歩けない無惨は血眼になって「青い彼岸花」を探していました。
鬼滅の刃15巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
しかし、どうやっても「青い彼岸花」がみつからないため、無惨は別の方法を試みます。
それは自分の血を分け与え、「太陽」を克服する鬼を生み出そうということ。
太陽を克服した鬼を自分の体に取り込みさえすれば、念願の完全体になれるからです。
無惨は人を食べるだけでなく、完全体になりたいがために鬼を増やすことまで始めました。
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鬼舞辻無惨の過去|産屋敷家の呪いの元凶になる
鬼滅の刃16巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
無惨が鬼になったころ、ときを同じくして本家である産屋敷家に異変が起きます。
生まれてくる子供が次々と死ぬという不幸が重なったのです。
偶然にしてはあまりに奇妙なこの現象に、神主は耳を疑うような事実を告げました。
生まれてくる子供が次々を死ぬのは「呪い」が原因であると。
同じ血筋から鬼が出ている。その者を倒す為に、心血を注ぎなさい。そうすれば一族は絶えない。
鬼滅の刃16巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
この鬼こそが、鬼舞辻無惨だったのです。
自分の欲望のために、人を貪り食うだけでなく、同類の鬼を増やし続ける悪の根源。
鬼舞辻無惨という鬼が一人生まれたがために、数えきれないほどの尊い命が奪われてしまいます。
こうして産屋敷家と鬼の始祖・鬼舞辻無惨の1000年にも渡る戦いが始まったのです。
産屋敷家にかけられた呪いの実態や、鬼舞辻と産屋敷の詳しい関係については次の記事をご覧ください。
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鬼舞辻無惨の正体|過去の記憶に怯える鬼
鬼となり1000年以上の時がたっても、鬼舞辻無惨は人間だったときの過去を引きずっていました。
人間だった無惨は病弱な体に生まれたがために、いつも死の恐怖に怯えていました。
それが無敵の鬼となってもなお、強烈なコンプレックスになっていたのです。
無惨の正体はただの臆病者だった
鬼滅の刃2巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
鬼となった無惨に決して言ってはならない言葉がありました。
「青白い顔」「今にも死にそうな顔」
この2つ言葉は無惨にとって、過去のトラウマを呼び覚ます引き金となります。
浅草でチンピラに絡まれた無惨は、最初は相手の無礼に対し紳士的に対応していました。
しかしそのうちの一人が、こともあろうか無惨の顔色を馬鹿にしたのです。
「青白い」「死にそうな顔」という言葉を聞いた瞬間に、無惨の狂気のスイッチが入りました。
鬼滅の刃2巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
自分は今にも死にそうな病弱な生物などではない。私はこの世の何よりも完璧に近い生物だ。
無惨は言われた言葉を全力で否定し、暴力と恐怖で相手をねじ伏せて命を奪います。
鬼となって絶大な力を持った無惨ですが、その内面は人間だったとき同じままだったのです。
無惨の正体は、迫り来る死を恐れて怯える「ただの臆病者」でした。
無惨を鬼にしたのは薬ではなく劣等感
鬼滅の刃3巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
人間だった無惨を鬼にしたのは、医師が作った薬ではありません。
病弱な自分に対する劣等感こそが、無惨を鬼に変えた本当の原因だったのです。
もし、人間だった無惨が「死」を受け入れ、病弱な自分を許していたならば、全く違う未来があったはずです。
健康な人を羨むこともなく、人を愛することもできたでしょう。
そして、自分に尽くしてくれた善良な医師を殺すこともなかったはずです。
もしかしたら、「強靭な体」と「日光の下を歩くこと」を両方手に入れることができたかもしれません。
無惨の最大の誤算は医者を殺したことではなく、死を怖がるあまり、愛を学ばなかったことです。
無惨が太陽を克服できないのは愛の欠如
鬼滅の刃15巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
無惨は鬼となって1000年もの間、「太陽を克服」するために鬼を増やし続けました。
しかし、人を貪り食う冷酷な鬼からは、一人として「太陽を克服」する個体は生まれません。
唯一この「太陽を克服」したのが、無惨のコントロールを自ら愛の力で外した襧豆子だったのです。
「人間は守り助ける者」
襧豆子は鬼となっても、一人として人間を食べませんでした。
鬼滅の刃15巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
襧豆子が太陽を克服したのは、人を思う究極の愛の行動の瞬間でした。
襧豆子は人間の命を助けるため、自ら太陽光に焼かれながら、兄・炭治郎を援護したのです。
その瞬間、襧豆子の体は音を立てながら焼けていきましたが、直後には体は元に戻りました。
さらには、太陽の下を歩けるようにさえなっていたのです。
襧豆子が太陽光を克服し、人間にまで戻る過程は別の記事で詳しく紹介しています。合わせてご覧ください。
襧豆子(ねずこ)が咥える竹とは鬼のシンボル!人間への道のりを解説
鬼滅の刃15巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
愛を学ばない鬼の無惨は、1000年もの時間をかけても太陽を克服できませんでした。
そしてさらには、襧豆子を自分の体に取り込めば、完璧な体になれると喜ぶ無惨は哀れです。
たとえ太陽を克服できたとしても、無惨は満足できずに不幸なままに違いありません。
愛を知らぬままに無限の命を生きることは、地獄に生きることに等しいからです。
その事実に気がつかずに、鬼として生きる無惨は病弱だった人間の頃から少しも成長していません。
無惨の正体は、救いようのない哀れな臆病者だったのです。
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