圧倒的な強さを誇る上弦の参 猗窩座。
弱者をとことん嫌悪し強者には敬意すら表す、強さに異常なまでの執着を持った鬼。
猗窩座の戦闘スタイルは、他の鬼には見られない武器を持たない素手による攻撃です。
実はこれら猗窩座の特徴は全て、人間だった頃の記憶に由来しています。
意外にも猗窩座が人間だったころは、大切な人を一生懸命に守る青年だったのです。
この記事では、猗窩座の人間だった時の悲しい過去について詳しく解説しています。
猗窩座の過去を知ると、ただ残酷なのではなく哀れな鬼であることが理解できるはずです。
猗窩座の過去は愛する人を守る青年
猗窩座が人間だった頃の名前は狛治。
狛治の狛は神社を守る狛犬の狛です。大切な人を守るために命をかけて戦っていました。
病気に苦しむ父親の薬代を稼ぐために、刑罰などもろともせず盗みを繰り返す少年時代。
父親の死後に自暴自棄になったものの、そんな自分を救ってくれた恩師とその一人娘を心から大切に思う優しい青年でした。
しかし狛治の人生は自分が命にかけて守りたいと思った人を失う悲しい運命にありました。
その悲しみが、弱者は存在する価値などないとする冷酷な鬼「猗窩座」の原点になります。
ここでは愛する人を守る狛治がどうして残酷な猗窩座になってしまったか解説しましょう。
病気の父親のために盗みを繰り返す
鬼滅の刃18巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
狛治の家は大変貧しく、病気の父親と二人暮らしでした。
病気に苦しむ父親の薬代を稼ぐため、わずか11歳でスリを繰り返す狛治。
腕には罪人の印である入れ墨が掘られ、大の大人でも失神するような百叩きの刑を受けています。
しかし盗みをしない限り、父親に薬を持って帰ることができません。
全く反省せずに犯罪を繰り返す狛治に、奉行所のお代官から「お前は鬼子だ」と言われます。
鬼滅の刃18巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
しかしその狛治の行動を改心させるべく、病気の父親は自ら首をつって自殺しました。
父の遺言は次の言葉が記されていました。
真っ当に生きろ まだやり直せる
俺は人様から金品を奪ってまで生き存えたくない
迷惑をかけて申し訳なかった
自分の行為で父の命を縮めてしまった狛治は自暴自棄になります。
自暴自棄の狛治を救った恩師・慶蔵
鬼滅の刃18巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
善人だった父親が病気と貧しさが原因で死に、世の中の理不尽さに苛立つ狛治。
気にくわない大人を見かけると、ケンカせずにはいられないほど荒れていました。
15歳の狛治が大人7人を相手に素手で喧嘩をしたときのことです。
「気持ちのいい奴だな」と狛治に笑顔で話しかける男がいました。
気が立っていた狛治はその男にまで殴りかかりますが、逆にボコボコにされてしまいます。
その男の名は慶蔵といい、「素流」という素手で戦う武術を教える道場主。
いくら喧嘩に強い狛治でも、全く歯が立たない相手だったのです。
この慶蔵との出会いが、狛治の人生を大きく変えます。
人生をやり直し最愛の恋雪と結ばれる
鬼滅の刃18巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
狛治は慶蔵から門下生になることを勧められました。
また慶蔵の一人娘の恋雪の看病も頼まれます。
実は慶蔵の妻が恋雪の看病に疲れ、入水自殺をしたばかりだったのです。
狛治は恋雪と死んだ父親を重ねながら、看病をする日々が始まりました。
鬼滅の刃18巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
三年が過ぎたころ、狛治の看病のお陰で恋雪は普通の暮らしができるほど回復しました。
そんなある日、慶蔵に呼び出されこう告げられます。
この道場を継いでくれないか狛治?
恋雪もお前のことが好きだと言っているし。
罪人の入れ墨が入った自分の未来なんて想像していなかった狛治は驚きます。
鬼滅の刃18巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
花火大会の夜、狛治は恋雪から「私と夫婦になってくれますか?」と言われます。
その言葉を受けて狛治は言いました。
はい 俺は誰よりも強くなって一生あなたを守ります
18歳の狛治は、ようやく人生をやり直せると胸を大きく膨らませたのでした。
幸せの絶頂から不幸のどん底に
鬼滅の刃18巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
狛治が死んだ父に結婚の報告をするために、墓参りから帰った時のことです。
命に代えても守りたいと思った恋雪と慶蔵の二人が、毒殺されました。
その犯人は、隣の剣術道場の跡取り息子でした。
鬼滅の刃18巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
実は、この剣術道場の息子も恋雪のことが好きだったのです。しかし乱暴者で思いやりに欠けた人間でした。
過去に恋雪を無理やり花火大会につれて行き、喘息の発作が出たのを見て逃げ出しています。
これに怒った慶蔵は隣の道場は試合を申し込み、16歳の狛治が1人で9人を倒して圧勝。
今後、素流道場と恋雪に関わらないと約束させていたのです。
隣の道場主は狛治の技に感動し、心から息子の無礼を詫びました。
しかし道場主がなくなり、狛治と恋雪の結婚の話を聞いた跡取り息子は面白くありません。
戦って勝てないので、井戸に毒を入れたのでした。
怒りと絶望から狛治は猗窩座になる
鬼滅の刃18巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
隣の道場の跡取り息子に、命より大切な恋雪と慶蔵を殺された。
この事実を知った狛治は怒り狂い、隣の道場に復讐をしに行きます。
狛治はたった一人で、隣の道場の門下生67名を素手でなぶり殺しにしたのです。
その中の一人に、井戸に毒を入れた跡取り息子もいました。
ほとんどの遺体は潰され、原型がわからなくなるほどひしゃげていました。
鬼滅の刃18巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
復讐を遂げ、呆然と夜道を歩く狛治の目の前に鬼舞辻無惨が現れます。
鬼を配置した覚えがない場所で鬼が出たと大騒ぎを聞きつけてきたのです。
無惨は狛治の鬼と間違われるほどの強さを見込んで、血を分け与えます。
すると狛治は一切の記憶を失って、鬼の猗窩座になり変わりました。
【合わせて読みたい!】
どの鬼にも人間だった過去があり、その人生や鬼となった経緯は実に様々です。
それぞれの鬼の驚くような過去を、別記事で詳しく紹介しています。合わせてご覧ください。
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猗窩座が無意識に引き継ぐ過去
猗窩座は人間時代の記憶を無くしています。
しかし鬼になってもなお、無意識に過去の記憶が色濃く残っていました。
・猗窩座の体の模様は罪人の入れ墨
・猗窩座の構えや技は素流の型
・術式展開の模様は恋雪の髪飾り
・技の名前は思い出の花火が由来
・猗窩座は絶対に女は食べない
・弱者を嫌い強者を敬う姿勢
この猗窩座の特徴が、人間だった頃の過去とどのように結びついているか解説しましょう。
猗窩座の体の模様は罪人の入れ墨
鬼滅の刃8/18巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
猗窩座の体には縞模様が巡らされています。
これは猗窩座が狛治だったころの腕に入れ墨が入っていたことに由来します。
江戸時代には入れ墨刑があり、スリや軽い罪の場合は腕に入れ墨を入れられていました。
入れ墨の模様は地方によって様々ですが、江戸では線を入れていました。
狛治の腕にも江戸の罪人の入れ墨が入っており、その数は両腕で6本。
しかし狛治は鬼の猗窩座となり、さらに罪を重ねたため腕の入れ墨が全身に広がりました。
猗窩座の構えや技は素流の型
鬼滅の刃18巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
猗窩座の攻撃は武器を一切使わず、素手のみ。
この構えや型は、猗窩座が人間だった時に身につけた「素流」の構えと技が由来しています。
素流とは素手で戦う武術です。
猗窩座が狛治だったころ、隣の道場主の息子が真剣を持ち出し狛治に切りかかりました。
その時、狛治は振り下ろされる真剣を側面から拳で真っ二つに折ります。
この技は狛治が最も得意な「鈴割り」という技で、猗窩座になっても富岡の剣を折る時に使っています。
術式展開の模様は恋雪の髪飾り
鬼滅の刃17 /18巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
猗窩座は戦う時、自分を中心に十二方向へ針を指した陣を展開します。
これは術式展開といい、相手の闘気を感知するためのものです。
まるで正確な羅針盤のように、相手の攻撃を読むことができます。
よく見ると、術式展開の羅針盤は氷の結晶のような模様をしています。
この模様こそが、猗窩座が人間の狛治だったころに愛してやまない恋雪の髪飾りの模様。
鬼になって人間の記憶を失くしてもなお、猗窩座の潜在意識に恋雪が存在していた証です。
技の名前は思い出の花火が由来
鬼滅の刃18巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
猗窩座の技の名前は、恋雪と一緒に見た思い出の花火に由来しています。
破壊殺 脚式 流閃群光
破壊殺 脚式 飛遊星千輪
破壊殺 砕式 万葉閃柳
破壊殺 終式 青銀乱残光
破壊殺 鬼芯八重芯
狛治が恋雪と見た花火は夫婦の契りを交わした思い出が詰まっています。
鬼となり人間の記憶を失なっても、猗窩座は技に花火から名前を付けていたのです。
猗窩座は絶対に女を食べない
鬼滅の刃18巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
鬼の食料は人間の血肉です。
特に女性は子供をお腹に宿し育てることができる栄養豊富な生き物。
鬼にとっては男性よりも美味しいご馳走ですが、猗窩座は決して女性を食べませんでした。
それは一般人のみならず、鬼殺隊でさえも。
女性を食べたほうが、強くなるのが早いのもわかっていたのにです。
強くなることに異常な執着を持っていたにもかかわらず、己を強くするために行うのは鍛錬のみ。
猗窩座が女を食べないのは無意識に恋雪を思う気持ちがあったからです。
弱者を嫌い強者を敬う姿勢
鬼滅の刃17巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
猗窩座は、弱者を異常なまでに嫌悪します。
一方で強者に出会うと喜び、敬意を表するという極端な性格。
その理由はもまた、猗窩座が人間だった時の記憶に由来しています。
自分が弱かったがために、大切な人を守れなかった。
病気の父親、師範の慶蔵、愛する恋雪の三人を守れなかった後悔からきているのです。
猗窩座は気が付いていませんが、最も嫌悪しているのは自分自身でした。
弱い者を見ると、昔の弱かった自分と重なるため許せなかったのです。
強さを求める猗窩座は、強者に出会うと鬼になることを望みます。
そうすれば自分と共に、鍛錬を重ねてもっと強くなり「至高の領域」にたどり着けると思ったからです。
その強さにこだわる理由も、恋雪に「俺は誰よりも強くなって一生あなたを守ります」と言った約束を守るためでした。
猗窩座は無意識に失った記憶を生きる鬼だった
鬼滅の刃18巻©吾峠呼世晴/集英社 より引用
愛する人を失い、その仇に復讐を果たし、全てがどうでもよくなった。
そのタイミングで鬼舞辻無惨が狛治を鬼にしました。
狛治の狛は神社を守る狛犬の狛。愛する人を守るために生きるのが使命でした。
しかし鬼になった狛治は、鬼舞辻無惨によって猗窩座と名付けられます。
猗:去勢された犬
窩:穴の中の巣
座:座る場所
参考:広辞苑
愛する人を守ることができなかった狛治を、鬼舞辻は「役立たずの犬=猗窩座」としたのです。
鬼になると人間だった記憶はなくなりますが、全てがなくなることはありません。
女は食らわず、ただただ鍛錬して技を磨き強くなる。
それは愛する恋雪を守ると誓った約束を守りたかったからです。
猗窩座は残酷な鬼ですが、人間だったころの過去を知ることで違った見方になります。
愛する人との約束を守りたくて、自分を追い込んだ可哀想な鬼だったのです。
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